生成AIとその未来展望

「プロンプト」について

プロンプトとは、AIに「こんなふうに考えて」「こんなものをつくって」と伝えるための指示文です。難しく考えずに、まずは思いついたことを素直に伝えてみる「プロンティング」から始めましょう。そこから工夫を重ね、より正確で効果的に伝える方法へと進化したものが「プロンプトエンジニアリング」です。

 

プロンプティングの心構え


生成AIを使ううえで重要なのは、どのような問いを立て、どのように指示を出すかという「プロンプティング」の技術です。ここでは、AIとの対話をより効果的にするために意識しておきたい10の心構えを紹介します。AIの技術は進化を続けていますが、それを使いこなす人間の姿勢が結果の質を左右することは変わりません。

1. ふわっと聞かない

曖昧な質問は、曖昧な答えを引き出します。できるだけ具体的に伝えることで、精度の高い出力が得られます。

✖️「面白い話をして」
◎「日本の昔話の要素を取り入れた、ユーモラスな短編を作って」

2. 対象を決める

誰に向けた情報かを明示すると、トーンや内容の調整が適切に行われます。

✖️「プログラミングを教えて」
◎「高校生向けに、Pythonの基本をわかりやすく説明して」

3. 丸投げしない

背景や前提条件を伝えずに指示を出すと、AIは一般論しか返せません。状況や目的を共有しましょう。

✖️「いいプレゼン資料を作って」
◎「高校生向けに、気候変動をテーマにした5枚以内のプレゼン資料を作って。図解を多く使いたい」

4. 最新の情報が必要なら、明示する

AIの学習データには更新の限界があります。最新情報が必要な場合は、それを明示してください。

✖️「最近のAIの進化について教えて」
◎「2024年以降のAIの進化について、可能ならウェブ検索して説明して」

5. 情報源の指定をする

医療・法律・科学など、正確さが求められる領域では信頼できる情報源を提示しましょう。

✖️「宇宙の最新ニュースを教えて」
◎「NASAやJAXAの公式サイトに基づいて、宇宙の最新ニュースを教えて」

6. 曖昧な言葉を避け、シンプルに

抽象的な表現は誤解のもとです。シンプルで具体的な単語を選びましょう。

✖️「未来的なデザインのロゴを作って」
◎「青と白を基調とした、幾何学模様を使ったシンプルなロゴを作って」

7. AIの苦手なことを知る

生成AIは万能ではありません。計算の正確性や長文の整合性、リアルタイム情報などには注意が必要です。

✖️「1000桁の素数を計算して」
◎「1000桁の素数の既知リストを調べて、上位3つを教えて」

8. 倫理的な制約を理解する

AIには、法や倫理に関わる制限が設定されています。不適切な質問には対応できません。

✖️「違法な方法でお金を稼ぐ方法を教えて」
◎「合法的な投資方法で、お金を増やす方法を教えて」

9. 文脈を持たせる

一問一答ではなく、流れをもった問いかけの方が、より深い回答を引き出せます。

✖️「プログラミングの勉強法を教えて」
◎「高校生でプログラミング未経験の人が、Pythonを1ヶ月で学ぶための勉強法を教えて」

10. 段階的に聞く

複雑なテーマは、一気に全体を聞くのではなく段階的に掘り下げていきましょう。

✖️「AIについて全部教えて」
◎「まず、AIの歴史について説明して。そのあと、機械学習の仕組みを教えて」

まとめ

生成AIを活用するうえで最も重要なのは、人間側の問いの設計力=プロンプティングの質です。これらの10の心構えを意識することで、より効果的にAIの力を引き出すことができるでしょう。

 

生成AIに指示を出すときの「心構え」評価ルーブリック

心構えの観点 できている だいたいできている 少しできている できていない
1. テーマをはっきりさせて聞いている 聞きたいテーマが明確で、回答も狙い通りになっている テーマは伝わっているが、少しあいまいな部分がある テーマがぼんやりしていて回答がずれていることがある ふわっとした聞き方で、AIも何を聞かれているかわからない
2. 誰向けの回答か伝えている 対象(例:小学生、専門家など)を明示して指示できている 対象はぼんやり伝わるが、もっと具体化できる 誰向けかがあいまいで、答えも一般的すぎる 対象がまったく不明な指示をしている
3. AIに丸投げしていない 前提・背景・意図をしっかり伝えている 一部の前提情報が不足している 必要な情報が足りず、AIが推測して答えている 何も情報を渡さず「どうにかして」とだけ伝えている
4. 曖昧な言葉を使わずに聞いている 「いい感じ」「それっぽく」など曖昧語を使っていない たまに曖昧な表現があるが、全体的には明確 多くの場面で曖昧語を使ってしまっている 曖昧語が多く、AIもどう答えていいか迷っている
5. スタイルや文体を指定している 例:「説明文で」「カジュアルに」など、文体の指示が明確 スタイルは伝わっているが、統一感に欠ける スタイル指示があいまいまたは抜けている 文体・トーンの指示が一切ない
6. 形式を指定している 箇条書き・見出し・Markdownなど、出力形式がはっきりしている 一部の形式指定だけ伝えている 出力形式が曖昧または一貫していない 書き方を一切指定せず、読みにくい出力になっている
7. 最新情報が必要かを明示している 「2024年時点での情報で」などの条件を正しく伝えている 情報の時期がある程度伝わっている 時期や更新性の指定があいまい 古い情報が出ても問題視しない指示になっている
8. 回答の使い道を伝えている 例:「プレゼン用」「授業で使う」など目的が明示されている 使い道はぼんやり伝わっている 使い道が読み取れないことがある 目的が不明なままAIに答えさせている
9. 文字数・分量を伝えている 「200字以内」「1000文字前後」などの制限が明確にある 分量の感覚は伝わっている 長すぎ・短すぎの出力になることがある 文字数や長さを一切伝えていない
10. 条件や制約を明確にしている NGワード・避けたい視点・入れてほしい要素などを伝えている 条件はあるが一部だけで、網羅できていない 指示があいまいで、意図とずれた出力になることがある 条件を伝えておらず、制御不能な出力になっている
 

学習の流れ

1. プロンプトを書いてみよう

まずは、自分なりにAIへの指示文(プロンプト)を書いてみましょう。

テーマや目的、誰向けなのか、どんな出力を期待するのかなどを意識して書いてみるのがコツです。

うまくできているか不安な人も大丈夫。次のステップで、自分のプロンプトをチェックする方法を紹介します。

2. 評価AIでチェックしてみよう

この教材では、あなたの書いたプロンプトをAIが評価してくれる「プロンプト評価アシスタント」を用意しています。

評価AIは、「プロンプティングの心構え10項目」に沿って、どの観点ができていて、どこが改善できそうかをアドバイスしてくれます。

評価にはこのページで紹介しているルーブリックを使っているので、どこを直せばいいかがすぐにわかります。

次のセクションにあるリンクから、「プロンプト評価アシスタント」にアクセスして、自分のプロンプトを入力してみましょう。

プロンプティングのヒント


正解はない

プロンプトには「こう書けば正解」という型があるわけではありません。むしろ、目的や対象によって使い分けることが大切です。

自然言語プロンプト

たとえば、俳句やスケッチのように、人の感情や空気感をとらえる表現には、自由記述の自然言語プロンプトが向いています。「どんな風に見せたいか」「どんな気持ちを込めたいか」など、主観的な情報を言葉で丁寧に伝えることが重要です。

構造化プロンプト

一方、デッサンのように、形・光・材質などの客観的な情報を正確に伝える場面では、項目ごとに情報を整理した構造化プロンプト(リスト形式やJSON/YAMLなど)が効果的です。

ハイブリッド・プロンプティング

さらに、近年の生成AIでは、自由記述と構造化形式を組み合わせた“ハイブリッド・プロンプティング”が有効になる場面も増えてきました。

たとえば、自然言語で「夜の静かな港町の雰囲気を表現して」と指示しつつ、構造化形式で「主なモチーフ: 船・街灯・水面」「光源の位置: 月光・左上から」など具体的な情報を併記すると、AIが両方の情報を補い合いながら、より精度の高い表現を出してくれます。

プロンプトを書くときは、「どの部分は主観で、どの部分は客観的に伝えるべきか?」を意識して、自由記述と構造化記述を組み合わせてみるとよいでしょう。

すぐに修正しなくてもOK

プロンプトを書いたら、まずは何度か試してみましょう。生成AIにはランダムな要素があるため、同じプロンプトでも異なる出力が返ってくることがあります。最初の1回で判断せず、複数の出力を見比べてから改善点を考えるのがおすすめです。

AIにも得意・不得意がある

ある生成AIで思うような出力が得られないときは、同じプロンプトを別のツールに入力してみましょう。AIごとに表現のスタイルや得意分野が異なるため、他のツールでは狙い通りの結果が得られることもあります。

 

評価を受ける

プロンプト評価アシスタントへ