1993年、日本中が「米が買えないかもしれない」という不安に包まれた出来事があった。いわゆる「米不足」だ。スーパーから米が消え、長い行列ができたのは事実だ。
農林水産省の資料(※農林水産省「作況調査(1993年)」)によると、この年の作況指数は全国で74と、平年を大きく下回る不作だった。一方で、政府は備蓄米の放出や緊急輸入を進めており、政府在庫や輸入量の推移は『食糧管理統計年報 平成5年版』に記録されている。つまり、国全体としての供給量は最低限の需要を満たす水準には確保されていたことが分かる。
それでも店頭から米が消えたのは、「米が足りない」というニュースをきっかけに、人々が一斉に買いに走ったためだ。買いだめが買いだめを呼ぶ連鎖が起き、需要が急にふくらんだのである。データ上は供給が確保されていても、人々の不安という“データに表れない要素”が社会を大きく動かした例だ。


